ビルマに民主主義が回復されるために日本政府がすべきこと

 ビルマ(ミャンマー)では1990年、総選挙によりアウン・サウン・スー・チー氏率いる国民民主連盟が圧勝したにもかかわらず、軍事政権が居座り、民主化勢力に対する弾圧と深刻な人権侵害が続いています。ビルマと日本は長く親密な関係があります。ビルマに軍事政権が誕生し、圧政が国際社会から非難される中でも日本政府はビルマへの経済協力を続け、独自外交を行ってきました。

 今、ビルマの軍事政権と民主化勢力との間に「対話」の再開の動きが出てきました。この機会にビルマに真の民主主義が回復されるために日本政府がすべきこと、しなければならないことを質問しました。

日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問主意書

 長年にわたる軍政下で、アウンサンスーチーさんを始めとする民主化勢力に対する弾圧と深刻な人権侵害が続いているミャンマー(ビルマ)に対して、国連やILO等の国際機関や欧米各国政府、NGOなど国際社会が、同国の民主化と人権状況の改善のために努力していることは周知のとおりである。最近、軍事政権と国民民主連盟(NLD)との「対話」再開が伝えられる中で、日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策が改めて問われる幾つかの問題が生じている。私は、軍事政権とアウンサンスーチーさんら民主化勢力との本格的対話が進展し、国民和解の上に同国に民主主義が回復することを心から期待しているが、これに反して、日本政府の対応が軍事政権への一方的肩入れと理解されるようなことはあってはならないと考えている。そこで、以下の事案について質問する。

一、ミャンマー(ビルマ)軍事政権とアウンサンスーチーさんら民主化勢力との「対話」再開の動きについて、日本政府はどのように評価をしているか。本年三月二日付けニューヨーク・タイムズ紙に、日本政府がミャンマー政府の最近の民主化勢力への歩み寄りを理由に「日本がミャンマーへの全面支援の再開を考慮」との記事が政府関係者の話として掲載されている。この記事の内容は事実であるか。また、事実とすれば、どの時点でどのような援助を再開する計画なのか、政府の見解を示されたい。

二、ILOは二〇〇〇年六月の第八八回総会でミャンマー(ビルマ)政府の強制労働がILO二九号条約違反であるとして制裁の決議を採択し、加盟各国はミャンマー(ビルマ)との関係を見直すべきとの決定を行った。これを受けて、ファン・ソマビアILO事務局長は加盟各国の労働大臣に対して、二〇〇一年二月一五日までに決議の遵守状況を回答することを求めている。日本政府は、どのような回答を行ったか、明らかにされたい。

三、日本政府は、ILOのミャンマー(ビルマ)に対する制裁決議が存在しているにもかかわらず、二〇〇〇年一二月に同国経済計画省ビル内に、日本の経済専門家及び職員を派遣した「ミャンマー経済構造改革支援タスクフォース」事務室を設け、さらに二〇〇一年二月には、ジェトロ主催(経済産業省後援)で「アセアン新規加盟国投資促進シンポジウム」を開催するなど、ミャンマー(ビルマ)への投資を促進する動きをしている。こうした日本政府の姿勢はODA大綱に抵触しているとともに、ILO決議にも違反していると内外から批判されている。日本政府は軍政による深刻な人権侵害が続いているミャンマー(ビルマ)への経済協力並びに直接投資に対して、どのような指針を持っているのか、示されたい。

四、日本の二輪・四輪車メーカーであるスズキ株式会社(以下「スズキ」という)がミャンマー(ビルマ)で、軍事政権と合弁事業を行っているとして、国際的な「スズキ・ボイコット」運動が起こっている。スズキは、同国で武器の生産等を所管している第二工業省所轄の「ミャンマー自動車・ディーゼルエンジン工業公団(MADI)」を合弁パートナーに二輪・四輪車の生産を行っている。民間企業とはいえ日本の一企業が軍事政権を直接のパートナーに合弁事業を行うということは、同国の人権状況並びに国際社会の取組を踏まえれば、倫理上も問題のあるところである。かかる事態は、日本政府が対ミャンマー(ビルマ)投資のしかるべき指針を持っていない結果ともいえる。

 日本政府は、スズキのミャンマー(ビルマ)での事業内容をどう把握しているか、また、軍事政権を直接の合弁パートナーとする合弁事業の倫理的問題性についてどう考えるか、政府の見解を示されたい。

 右質問する。

 
内閣参質一五一台一四号
  平成十三年四月二十日
                          内閣総理大臣 森  喜 朗



参議院議長 井 上  裕  殿



参議院議員竹村泰子君提出
日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員竹村泰子君提出日本政府の対ミャンマー(ビルマ)政策に関する質問
に対する答弁書

一について
平成一二年十月から開始されたミャンマー政府とアウン・サン・スー・チー女史と直
接対話については、同国の民主化に向けた重要な一歩として高く評価している。この
ような直接対話の実現の背景には、我が国を始めとする国際社会の粘り強い働き掛け
に加え、ラザリ・イスマイル国際連合事務総長特使の尽力があったものと考えており
、今後とも同特使と連携を図りつつ、ミャンマーの民主化に向けた努力が行われるよ
う様々なレベルで働き掛けていく考えである。
御指摘のニューヨーク・タイムズ紙の記事は、このような直接対話を踏まえ、我が国
政府が昭和六十三年以来停止していたミャンマーに対する援助を全面的に再開するこ
とを検討していること等を報じている。しかしながら、ミャンマーに対する政府開発
援助については、従来から、民主化及び人権状況の改善を見守りつつ、当面は既往継
続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検
討の上実施するとの方針の下に行ってきており、この方針を変更し、援助を全面的に
再開することを検討しているという事実はない。

二について
平成十二年十二月八日付けの国際労働機関(以下、「ILO」という。)のファン・
ソマヴィア事務局長の書簡に対しては、次のとおり回答した。
1 我が国とミャンマーとの関係は、ミャンマーにおける強制労働を直接的又は間接
的に助長するいかなる要素を含むものではなく、我が国が基礎生活分野を中心にミャ
ンマーで実施している政府開発援助案件についても、同国の強制労働を助長している
例ない。
2 我が国は、ミャンマーにおける強制労働問題の早期解決を念願するものであり、
そのための同国政府とILOとの建設的な対話が 早急に開始されることを希望する。
三について
ミャンマーの経済計画省ビル内に「ミャンマー経済構造改革支援タクスフォース」事
務室を設けたという事実はない。また、本年二月の「アセアン新規加盟国投資促進シ
ンポジウム」は、日本と東南アジア諸国連合(以下「アセアン」という。)との協力
を進めるとの観点から、アセアン加盟国間の経済格差の是正及びアセアンの統合支援
を目的として、アセアン新規加盟国であるカンボディア、ラオス、ミャンマー及びヴ
ィエトナムへの投資の促進を図るために開催されたものであり、ミャンマーにおける
強制労働を助長する要素を含むものではない。
ミャンマーに対する政府開発援助については、民主化及び人権状況の改善を見守りつ
つ、当面は既往継続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・
バイ・ケースで検討の上実施する方針としている。このような方針は、開発途上国に
おける民主化の促進、基本的人権及び自由の保障状況等に十分注意を払いつつ、相手
国の要請、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断の上、政府開発援助実施する
こととしている政府開発援助大綱(平成四年六月三十日閣議決定)に沿ったものである。

ミャンマーに対する我が国の民間企業による直接投資については、ミャンマーが様々
な形で国際社会との関係を持つことが同国の民主化の促進にもつながるものと考えて
おり、特にこれを抑制していない。
四についてスズキ株式会社は、ミャンマーにおいてミャンマー自動車・ディーゼル工
業公団(MADI)外二社とミャンマー・スズキ社を設立し、日常生活用の二輪車(
総排気量〇・一二五リットル程度)及び四輪車(総排気量一リットル程度)を生産し
ていると承知している。
ミャンマーに対する我が国の民間企業による直接投資については、ミャンマーが様々
な形で国際社会との関係を持つことが同国の民主化の促進にもつながるものと考えて
おり、このことは同国の公営企業等と我が国の民間企業が合弁事業を行う場合にも当
てはまると考えている。


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