佐久間真一(進出企業問題を考える会 事務局長)
日本は世界一の造船王国であることは広く知られていますが、日本で造られた船がどこで、どのようにスクラップされているかご存知でしょうか。船舶を解体することを「解撤」といいますが、この解撤事業は作業自身が「労災の百貨店」といわれるほど危険である上に、廃油やアスベスト、PCB、有機スズ系塗料などによる深刻な海洋汚染が避けられないこともあって、日本で造られた船も含め世界の船舶解撤量の9割以上がインドやバングラディシュ、パキスタンなどの途上国で行われています。
■ 日本の造船会社によるセブ島での海洋汚染
進出企業問題を考える会では、この間、日本消費者連盟、全造船労組(関東地協)、全国労働安全衛生センターなどと協力して、広島県に本社のある常石セブ造船のフィリピン・セブ島での船舶解撤事業によるものと思われる海洋汚染問題に取り組んでいます。97年7月の第二次現地調査、99年11月の第三次現地調査で、常石造船の現地合弁企業の操業海域周辺の汚泥や巻貝から高濃度の有機スズ化合物やPCBが検出され、地元の住民達が危惧している海洋汚染が進んでいることが判明しました。船舶にはこれまで、船底に貝などの生物が付着しないように殺生物性の有機スズ系塗料が広く使われてきました。この塗料には「環境ホルモン」物質の一つである猛毒の有機スズ化合物(TBT)が含まれていて、それが海に溶けだして海生生物に深刻な異変をもたらしています。有機スズ系塗料は、今は日本国内では生産・使用が禁止されていますが、海外ではまだ日系企業も含め生産・使用されています。現在スクラップされている船舶は規制前に造られたものですから、この有機スズ系塗料が使われています。また、日本国内でも船舶の修繕による有機スズ汚染が危惧されています。
■ 日本の「公害輸出」と市民の責任
日本の造船会社の海外でのCには運輸省から助成金が交付されていて、これまでにフィリピン、ベトナム、中国での解撤事業に13億円以上が支払われています。フィリピン・セブ島の住民達は、私たち日本の市民に「日本の官民一体の公害輸出を止めさせて!」と訴えています。私たちは、常石造船のセブ島での船舶解撤事業による海洋汚染問題の解決をはかるとともに、海外事業を含む日本の造船・船舶解撤事業の環境保全対策の改善を求めるために、市民団体、労働組合、弁護士グループ、研究者などが協力しあって、日本国内でこれまで問題とされてこなかった「船舶解撤事業と環境問題」について調査研究し、造船業界や運輸省、環境庁など関係省庁への働きかけを行っています。省庁交渉や国会での取り上げの際には、当会の会員でもある竹村泰子参議院議員にいつもお世話になっています。私たち市民のキャンペーンも多少影響したと自負していますが、日本政府及び国際海事機関(IMO)、バーゼル条約締約国会議においてもようやく「船舶解撤事業と環境問題」への取り組みが始まっています。私たちは、造船王国・海洋国の市民として、引き続きこの問題に取り組んでいきますので、関心のある方はご連絡ください。
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