原発推進特別措置法案の問題点(2000.11.14)
(正式名称:原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法案)

1 法案の目的
原子力施設の立地自治体及びその周辺自治体に、新たな補助金をばら撒くこと。「周辺」の定義、補助金の支給対象事業、補助金総額ともに、本文上には明確な規定がなく、法施行後に無尽蔵に拡大する恐れがある。

2 補助金支給の仕組み
法案の特徴は、内閣総理大臣を議長とする「原子力立地会議」(以下、立地会議と略す。)が設置されること。この立地会議が「原子力発電施設等立地地域」(以下、立地地域と略す。)を指定し、都道府県知事がこれに呼応して「原子力発電施設等立地地域の振興に関する計画」(以下、振興計画と略す。)を提出、これを内閣総理大臣が承認、決定すれば、その事業に補助金が落ちる。

3 原子力を理由の二つの支援措置
1)補助金額は一般的には事業総額の50%だが、原子力防災に関わる施設、事業と認定されれば、「一割り増し」の55%となる。
2)立地地域の中に工場設備等の誘致をすると事業税、不動産取得税、固定資産税などを減免することができ、それによって立地地域の自治体が被る損失を地方交付税で補填する。

4 何でもありの補助金対象事業
補助金対象事業は、「基幹的な道路、鉄道、港湾等の交通設備および通信設備」「農林水産業、商工業その他の産業振興および観光の開発」「生活環境の整備」「高齢者の福祉その他の福祉」「防災及び国土の保全」「教育、科学技術及び文化の振興」そして「ほか」。要するに何でも良い。(第5条関係)交通設備の中には「空港」も入るし、生活環境の整備や国土の保全なら「大規模ダム」も入る。これらが振興計画として認められれば、少なくとも平均で50%の補助金が出る。さらに、原子力防災目的と認められる施設として別表があり、道路・港湾、消防用設備、義務教育施設などが対象。これらの補助金は一割り増しの55%となる。しかも補助金支給対象は、施設建設だけでなく補修、改修、何でも構わない。財源は明記されていないが、立地地域をどこまで広げるのか、対象事業をどこまで広げるのか、すべて「立地会議」で定めると、いわば白紙委任状態。

5 法案提出の経緯
法案提出の動きは昨年秋から。法案提出者は加納時男参議院議員などの自民党商工族。衆議院選前には新潟県選出の桜井新前議員(落選、自民党)が、熱心に推進してきたが、その後は島根県選出の細田博之衆議員議員が熱心に推進している。背景には、補助金の上乗せをせまる原発立地自治体の要求がある。衆院選前には、電源開発促進対策特別会計の中に新たに「電源地域対策勘定」なるものをつくり、1000億円を超える新しい原発補助金財源を作り出すものだった。今回の法案には、「電源地域対策勘定」のような枠組みはないが、意図は同じ。

6 クスリづけの原発立地自治体
原発立地自治体には、これまで1兆円を超える補助金、交付金が落とされている。それにもかかわらず、これら自治体は自立できない。法案上程にむけた立地自治体の総決起集会の資料には「いまだ自立した発展を示すまでに至らず」と書かれ、これが補助金行政の帰結であることを、みずから証明している。この法案は、自立できない自治体をさらに補助金づけにし、さらに誘致企業への税制優遇措置を国庫で補填するという枠組みによって、自治体がますます国にしがみつかなければ生きていけない構造にする。600兆円を超える借金を抱え、財政改革地方分権が重要課題のる今、この法案はまったく逆の、補助金バラマキ法案。

7 電源三法交付金と電源地域振興センター
「(財)電源地域振興センター」という特殊法人は、1990年に設立され、立地自治体の交付金事業の立案や実施に深く関わってきた。「振興相談事業」、「調査事業」、「研修事業」、「専門家派遣事業」、「販売促進事業」、原子力立地給付金交付事業」、「企業立地試験事業」、「広報事業」などが事業内容。この特殊法人が、自治体の間尺に合わない事業計画を立て、みずから呼び込んだ業者に事業を請け負わせ、実際には申請より少ない費用で建設を終了し、支払われた交付金をピンはねしたら、全国的規模では相当の資金がこの特殊法人に還流することになる。原発版KSDである。

発覚した一つの事例
柏崎刈羽原発の建つ刈羽村が電源三法交付金事業として建設した生涯学習施設で、さまざまな手抜き工事が発覚した。8000万円で建てたはずの豪華な茶室の畳がスタイロ畳(発泡スチロールみたいなもの)、桧の柱が栂の柱、由緒ある玄武岩がだだの石など、設計とはまったく違うものだった。総工費21億円で沼地を埋め立てて作ったゲートボール場が設計ミスで水浸し。あまりにズサンなため村民に不審に思われ、調査がはじまった。この事業計画全般を取り仕切り、事業構想を示し、基本計画を作り、実施事業者を紹介したのは、「電源地域振興センター」の担当理事で通産省OBである。

8 法案成立の可能性
この法案が採決に持ち込まれれば、国会の議席配分からは成立する可能性が高い。自公保与党三党は、本会議上程ではなく11月14日の衆議院商工委員会での審議入りを計画していたが、それは難しくなった。しかし、まだ予断は許さない。国会会期末が迫っているが、変則的なやり方で強行に成立を図ろうするだろう。今週が山である。

 


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